妄想劇場 27


(こちらは完全に妄想の物語です。
実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)





紅白歌合戦 当日 1





目覚ましがなっている。
あれ。今何時だろう。
大晦日の。朝。いや、昼か?
今夜は紅白歌合戦。
年の暮れの大仕事と、明けてすぐのCDTVへの出演。
それが終わって初めてオレの1年が終わります。
毎年長ーい年越し。
年越しそばも初詣も初日の出もない。
行けるのは…世間がお正月モードが抜けたあと。
そのくらいにひっそり行ってひっそりお詣りする。

あれ。ちょっと待て。
一日って。初日舞台挨拶とか入ってなかった?
お正月映画の公開じゃなかった?
オレ確か主演したよね?
三賀日は休み無し!って石田くん言ってなかったっけ…

一日は火曜日。本来ならラジオの夜だけどそこは収録になった。先週の火曜日に収録済み。
なぜなら…初日舞台挨拶を東京でやった後に。関西に移動するから。2日に関西で舞台挨拶。
3日には…戻ってこれるはずだけど。

オレの頭の中の勝手な予定が足元から崩れ落ちる音がする。
CDTVが終わったら…かおるさんと過ごす気満々だった。

あの雪女の化けの皮を剥がしてやる!って。
昨日の夜。雪女の中身は実は氷どころか熱すぎて火傷しそうなくらいだった。
キスだけで気持ちよすぎて。あれ以上出来んの?
気持ちがあるからそうなのか、かおるさんがキスが上手いだけなのか。
どっちでもいい。
着物着てなかったら…多分あのまま襲ってました。
脱がせ方なんか知らないもん。着物の仕組みも分かりません。
どこをどうしたらあの鉄壁の鎧が外れるのか。
想像もつかない。
いきなり裾から??
わー。やーらし。
もーなんでもいい。オレはかおるさんが欲しいの。


…なのに。
この年末の1週間で縮まった距離がまた少し開いてしまう気がする。かおるさんはいつからお仕事なんだろ。

ここまでを布団の中で考えた。
とりあえず行動に移そう。
スマホを探す。見えん。メガネ。メガネ。
あ。あった。
電話しよ。声が聞きたい。

コール音が鳴る。鳴る。…鳴る。
出ない。どしたんだろ。


「ん…もしもし…」

かおるさん?

「星野さん…?」

おはようございまーす。

「…はい。おはよーございます…」

寝てたの?

「うん…今起きました…」


やばい。寝起きの声が想像以上に可愛すぎてエロすぎて。なんでオレは今一人なんだ?なんで昨日帰ってしまったんだーっ!って悔やんでもどうしようもないことを悔やむ。


「…どーしたんですか?」

あ。いや。かおるさん正月って休みいつまで?

「3日までだったと思います…」

ですよねぇ…

「あ。でも4日が初仕事だけど、年始の挨拶だけだったかな?で5、6が土日なんでまた休みですよ?」


正直そこまでの予定はオレの頭の中には入ってない。
ここに石田くんがいてくれればっ。
すぐわかんのにー。


そっか。

「星野さん…寝れましたか?」

え?あ。うん。寝れました。

「よかったです。」

かおるさんは?

「んー。だいぶと…ゴロゴロしてましたね…」

ゴロゴロ?

「なかなか寝れませんでした。興奮しちゃったみたいです。」

ふははっ。興奮してたの?

「そりゃ…しますよ…」

かおるさん。素直でよろしいですね。

「ありがとうございます…」

じゃ。また後で。

「はい。また後で。」


通話が切れた。
興奮してたのね…なんか嬉しいんですけどっ!
起き上がってシャワーに入る。
熱いお湯を浴びながら…脳裏にいろいろ浮かんでは消えてニマニマする。

せっかくだからそばでも食べていこう。
年越しそばは年越す前に食べればいいんだから。
1年弱になるか?料理にハマってから。
自然と鼻歌を歌いながら出汁を取る。
あれ。年越しそばって何入れるんだろ。
まぁいっか。適当で。
冷蔵庫にあるものでなんとなく何かのそばが出来上がる。

いただきます。
うまーい!オレ天才!

もしかして料理の才能あるのかも…転職する?
とか訳のわからんことをふわふわ考えながらそばを啜った。
脳裏にチラチラ雪女の微笑みが浮かびながら。


「星野さん。おはようございます。」


ただいま3時。石田くんがお迎えに来てくれた。


おはよー。石田くん。

「昨日のオムライスは美味しかったですか?」

相変わらず。美味しかったよ。

「それからは?」

え?ん?…帰ったよ?

「星野さん…信用してるんですからね?」

…はい。

「気持ち悪いくらいに素直ですね」

気持ち悪いの?ふははっ。

…そういやさ。年明けてからの予定って。どうなってる?

「そうですね…」


運転しながらカバンをガサゴソしだしたので慌てて後でいいから!と制した。事故られたらたまったもんじゃない。


「とりあえず記憶してるだけ言いましょうか?」

ん。じゃお願い。

「明日は12時と15時から舞台挨拶です。上映中に取材が2本。その後取材が5本。その後最終の新幹線で大阪へ。
2日は朝のTV番組に生出演して、取材が2本。その後12時舞台挨拶、取材2本、16時舞台挨拶。
それからまた新幹線で博多に移動。」

え。博多もあったっけ?

「博多のあとは北海道です…」

全国行脚なのね…

「星野さん主演ですから。」

んー。じゃ次の休みはいつ?

「5日ですかね…」

土曜日?

「お正月休みってほどでは無いですけど、5日、6日7日と連休にしてあったはずです。」

じゃ石田くんもしばらく年が明けないね。

「星野さんとともに。」

一蓮托生ってやつですか…

「かおるさんみたいですね」

え?なんで?

「そんな。なんか小難しい日本語使う感じが。」

んはは。似てんの?

「なんとなくですけどね」


ニマニマ顔のオレを見て。


「星野さん…気持ち悪いですよ?」

石田くん。うるさいよ?


車の中でオトコ2人の変な笑いが響いた。

NHKホールには時間通り間に合った。
今までもリハーサルで何回か来てるのに。やっぱり本番当日は緊張感が漂うし、自分自身も身が引き締まる思いになる。
オレ自身の登場時間は10時45分くらい。
めちゃくちゃ長丁場。
まだ3時台なんですけど…
実際の出番の前には副音声(裏紅白ってやつ)で公式お兄ちゃん達と喋べりに行ったり。
紅白直前番組で映像に出たり。
それこそ秒刻みなスケジュールが待ち構える。
こっちからあっちへスタッフに連れられて行くだけだから出荷されるみたいで面白かったりする。
廊下とかで友達のアーティストに会えたりすると嬉しかったり。


かおるさん…何時くらいに来るんだっけ。

「え?」

あ。ほら。かおるさん?
何時頃来るのかなぁーって。

「それは僕より詳しいんじゃないんですか?」

聞いたけど。忘れた。

「かおるさん…星野さんのどこがいいんだろ。」

どーゆー意味よ。

「いやいや(笑)
確か7時には来てるはずですよ。」


時計を見る。
あと3時間半もあるじゃん…

とりあえず土日が休みなら。一緒に過ごすことが出来るかもしれない!と目の前のタイトなスケジュールを飛び越えて休みの予定を考える。

でもまずはかおるさんの確認取らなきゃね…
スマホを取り出してLINEすることにした。
「壁に耳あり障子にメアリー」をふと思い出したから。

「今度の土日はなんか予定入ってますか?」

いきなり要件をぶち込んだ。

少ししたら既読が付いて返事がシュッと持ち上がる。

「今のところは何もないです。」


ヨッシャーっ!!!

「星野さん?」

あ。なんでもない。何でもないよ?石田くん。


めちゃくちゃ不審な目線が痛いです…

「初詣行きませんか?」

「素敵ですね。いいですよ」

「じゃ土日は空けといてくださいね」

「わかりました。」


なんかすんなり。
意味わかってんのかな。
土日空けとけって意味。
まぁいいや。とりあえず約束は取り付けれたんだから。
何なら北海道からの帰りにかおるさんのとこに直行したっていいんだ。
素敵なお休みの日程が決まって。これからのハード&タイトなスケジュールを難なくこなせるような気になってきた。

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