妄想劇場 38


(こちらは完全に妄想の物語です。
実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)




CDTV 2






「星野さーん、お願いしまーす」


スタッフが呼びに来た。
到着早々に出番だ。忙しい番組よね…


はーい。いってきまーす。


控え室を出てスタッフに付いていく。


「星野さん、抱負考えてこられてます?」

あ。はい。一応。

「では、出番前に書いていただくんで、こちらにお願いします。」


スタッフが開いたドアの中に入る。
そこには硯と筆と長めの半紙が準備されている。


「すみません、5分でお願いします。」

はーい。


考えてこなかった訳じゃないんだけどねぇ。
どっちにしようかな。
新しい目標を掲げるのか。
それとも去年のをそのまま引き継ぐのか。

去年の抱負は『真剣に遊ぶ』
出来たと思っている。春に出した新曲も、夏に撮った映画も秋に出したアルバムも。自分の出来る全てのことを駆使して本気で遊んで。前を向いて進んできた。

今年はどうしようか。
やっぱりこっちよね。

左手で筆を持つ。
出来れば筆でかくのは避けたい。
左利きが故の宿命。筆を引くのではなく押さないといけないから元々上手ではない文字がますます下手くそになる。
準備されてるんだから仕方ないけども。
今年1年をこんな年にするんだと心に思いながら筆を進めた。


でーけた。

「星野さん、出来ましたか?」

はい。今しがた。

「では、スタンバイお願いします。」

はーい。


スタジオの脇から中に入り、自分の名前を呼ばれるまで待つ。


「それでは次は星野源さんです!」


合図が出た。
出て!ってスタッフもオレに合図をする。
ちょっと足早に明るい照明の中に出る。
にこやかな笑顔を貼り付けて。


こんばんわー!星野源でーす!

「あけましておめでとうございます。星野さん。」


女性アナウンサーが艶やかな振袖姿で迎え入れてくれる。かおるさんには及ばないけどね。


おめでとうございます。今年もよろしくお願いします!

「さて、星野さんは去年も目覚しいご活躍でしたね!」

ありがとうございます。

「かなり忙しかったのでは?」

忙しかったです!ふははっ。

「去年の抱負は達成出来ましたか?」

自分ではそう思っています。

「『真剣に遊ぶ』とありましたが、公私共に。」

そうですね!はい。

「では今年の抱負をお願いします。」

はい。今年はこれにしました!


スタッフが持ってきてくれたさっき自分で書いた掛け軸の長さくらいある半紙。ちゃんと裏地までついてる。どこにかざんの?
ちょっと思いながらそれをたらーんと垂らす。

『真剣に生活する』


「去年は「遊ぶ」でしたが、今年は「生活する」ですか?」

そうなんです。
去年の初めくらいに料理の楽しさに目覚めたりしたのと、まぁ年齢的にもね。少しずつ無理が出来なくなって来てるなぁと感じる所もあって。鍛えたりとかもしてるんだけど。今年はちゃんと人間らしい生活をしてみたいと思って。
もちろん仕事も真剣にするんですけどね。

「生活ってなかなか難しいですよねぇ」

そうなんですよ!
仕事柄ってのもあるけど、なんせリズムがないじゃないですか。

「そうですよねぇ…」

誰しもがやってることなんだけど、突き詰めると結構めんどくさいなってことも多いし。
そのへんをちゃんとしたいなと思って。

「なるほど。頑張ってくださいね!」

はい。ありがとうございます!

「それでは、星野さんには後ほど去年のあの曲を披露して頂きます。よろしくお願いします!」

はーい。よろしくお願いしまーす。


あれ。なんか微妙だった?
オレの今年の抱負。
ま、いっか。
スタッフに連れられて控え室に戻る。
着替えて、歌って、また着替えて…やっと長い長い1日が終わる。
昼過ぎからスタートしただけなのにてっぺん超えると何故かしんどくなる。気持ちの問題だろうけど。


ただいまー。

「おかえり。源ちゃん。」

亮ちゃん、今年の抱負、おかしかった?

「え?そんなことないよ?大事なことじゃん。」

そうよねぇ

「かおるさん呼んで来ますね」


石田くんが控え室を出ていった。


「年齢的にもね。ちゃんとしたいよねぇ」

わかってくれるかー!大地くん!


さすが苦楽を共にした仲間なだけある。
進む道は違えども。大事なオレの友達。


お待たせしました。すみません。

「かおるさん。おかえりなさい。」

では着替えましょうか。
今着られてるのを脱いで下さいね。
で、これに着替えて来てください。


男物の長襦袢とステテコ、足袋を渡される。


はーい。


フィッティングルームに入り、ゴソゴソと着替えを始める。
外ではかおるさんとメンバーの会話が繰り広げられている。


「かおるさんはお酒飲めんの?」

「嗜む程度ですけどね」

「強そうなのに」

「強くはないです。でも気絶するほど飲んだこともないですね」

「コントロールが上手いのねぇ」

「飲まされないように飲むフリをしてることはよくあります。」

「飲み会とか?」

「ええ。」


ステテコを履いて足袋を履く。
金具が上手く入らない。
もー。最初から着てたVネックのTシャツの上から長襦袢を羽織りフィッティングルームから出た。


かおるさん!この金具!入らないよ?

「ふふっ。星野さん。子供みたいですね」


振り返って笑った。
優しい眼差しが…今は恥ずかしいんですけど。


「ここに座ってください。」


椅子を指される。
誘導されるがままに座る。
オレの前にかおるさんが膝まづいた。


「わたしの膝の上に足を置いてください?」

え?

「ほら、早く。」


膝の上に足だと!?
なにそれ!
恐る恐る足を浮かして彼女の膝の上に乗っける。
中途半端に履いてる足袋をつま先からからしっかり入れ込み撫でるように踵まで生地をそわす。


「踵を直角にしてください」

こう?

「そうそう。」


かおるさんの太ももに斜めに突き刺さるオレの踵。
つま先は天井を向いてる。
手際よく足袋の金具を引っ掛けていく。


「はい、もう片方」


乗せていた足をおろし、もう片方を膝に乗せる。
かおるさんはこの時下を向いてるから。衿ぐりがよく見える。動く度にフワッと香るお香の匂いに…


「源ちゃん。見すぎよ?(笑)」

亮ちゃん!しーっ!
今いいとこなんだから!


って言ったらそこにいた男性陣が全員笑った。
かおるさんからしてみれば咄嗟に取った行動なのかもしれないけど、見てる方からすればすごい絵面だ。


「はい。出来ました。立ってください?」


何事も無かったようにかおるさんが立ち上がりオレの衣装を持ってくる。
後ろに回り込み、オレの腕から入れてくれる。
波平さんがフネさんにやってもらうみたいな。
腕が入ると前に回ってきて、入りきらなかった襦袢の袖を内側から突っ込む。襦袢の衿を合わせ直し、着物の衿を合わせる。
腰紐1本を腰の位置で回して結ぶ。
それから細い帯を取り出し、またオレの背中側に回る。後からかおるさんの腕が回ってきてオレの前で帯を受け渡し、また後に戻る。
それだけでもエロい!
背中側では何がどうなってんのかわからないけど、1回だけぎゅっと結ぶ感触があった。
次は袴。床の上に広げてここに足をいれてくれとお願いされる。
オレの前に立ち袴の位置を決めて紐を後に回して結んでる。この時の格好はまるで抱き合ってるみたいな状態。(鏡で確認)
でもオレの格好は前は袴姿なのに後ろはガラ空きってゆー間抜けな状態。
かおるさんはすぐに後に回り、またゴソゴソと紐を処理している。
今度は後ろ側の袴の紐が差し出された。


「この紐、持っててください。」

はい。


脇のところら辺で持ち替える。手が触れる。
何事もないようにかおるさんは事を進めていく。
またオレの前に回ってきて持ち替えた紐を受け取り、跪く。
この時がエロいですねぇ。
上から見下ろす形になるので。顔は見えないけども。
長いまつげが肌に影を落としている。
紐を腰の少し下ら辺で十文字になるように処理をする。もう少しで当たりそうなのに。
当たんねぇんだな!何考えてんだ!オレ!
最後にまた黒い腰紐でたすき掛けをしてもらった。


「はい。出来ました。」

「おおー。早いねぇ」


一部始終を息を飲んで見守っていたメンバー全員から拍手が起こった。


「自分がされてる時はわかんないけど、人がされてるのを見るとエロいねぇ」

伊賀さん?そんなこと言える人だったの?

「男ですからねぇ」


一同大爆笑。まさかの伊賀さんの発言って!


かおるさん。ありがとう。
なんか引き締まった。

「よくお似合いです。行ってらっしゃい。」

「星野さーん!スタンバイお願いします!」

はーい。


亮ちゃんを筆頭に全員ズラズラと外に出る。
オレは1番最後に出ることにした。


ちゃんと見ててね

「はい。」


メンバー達には聞こえない会話をこっそりして。
何も無かったかのように後を追いかけた。
そして今年(オレはまだ年越ししたつもりはない)最後のお仕事に向かった。

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日々の嫉み