(こちらは完全に妄想の物語です。
実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)
36 紅白終わり移動
紅白歌合戦が今年も幕を降ろそうとしている。
今年は白組が勝ちました!オレ達の着物姿もかなり好評でした!
テッペイさんもすごい褒めてくれたし。
他の出場者の方々からもかなりお褒めの言葉を貰った。
かおるさんに頼んで本当によかった!
ただ…オレは何してたんだ。かおるさんのことちゃんと見てるからって言いながら何も見てなかったじゃないか。潤くんや亮ちゃん、修さんに教えてもらってばかり。
やっぱりかおるさんはすごいや。
顔に全部出てるはずなのに。自然と周りを引き込む魅力があるんだろうな。
手を差し伸べたくなる魅力。
現にオレだって最初の出会いの時からそうだったもんな。
はぁー。この半年は…いろいろありましたね。
走馬灯のようにこの半年を頭の中で振り返ってみる。
でもよく考えたら…かおるさんと会った回数は本当に知れてる。それなのにもっと知りたい。もっと一緒にいたい。オレのものにしたい。感情だけが先走ってるような…。いや。回数とか期間は問題じゃない。
自分でもオレの事を好きだって言ってくれるファンの方々に言ったことがあるじゃないか。古参とかニワカとかはなく、あるのは好きという気持ちだけって。
あ。墓穴掘った。そんなにも深く雪女にハマってしまってんのか。
大合唱が終わり、紅白歌合戦が終わる。
「お疲れさまでしたー!」
スタッフの皆さんが安堵の表情を浮かべてる。
オレら出場者は次の番組へと向かうので舞台を早く降りようと袖に向かう。大渋滞。
CDTVは最初から参加ではないから。
でも時間は決まってたはず。早く戻らなきゃ。
「源くん。」
なぁによ。潤くん。
「さっきさ。ヤキモチやいたでしょ。」
え?
「オビナタさんと一緒に荷物持って行った時」
ヤキモチ?
「違うの?」
いや。違わない。
「やっぱりねぇ」
オレそんなにわかりやすい?
「さっきはわかりやすかったよ?」
ふははっ。そっか。
「またメシいこーね。」
松本潤が意味深な笑みを浮かべながらメンバーのとこに戻っていった。
ゆっくり進む控え室への道。
オレのバンドメンバー達はそれぞれ次の現場に向かってるはず。
オレとかおるさんと石田くんが追いかけることになっている。
控え室にやっとたどり着いた。
ただいまー。
「お疲れさまでした。星野さん。」
「おかえりなさい。」
「あまりゆっくりしてる時間はありません。次の現場に行きますよ!」
石田くんが急き立てる。
オレ衣装このままだっけ?
「そうです。そのままです。はい。コート。」
石田くんがコートをかおるさんに手渡す。
かおるさんは何も言わずにオレの後ろに回って腕を通してくれた。石田くんは荷物をまとめて持ってくれている。
かおるさんもいつでも出れるように既にコートを羽織っていた。
「さ。行きましょう。」
バタバタと控え室を出てエレベーターに向かう。
石田くんを先頭にオレとかおるさんがあとに続く。
「オビナタさーん。まったねぇ~」
潤くんが声をかけてきた。
かおるさんは軽く会釈をする。
オレには?
エレベーターに乗り込んだ。
潤くんと仲良しになった?
「なってませんよ。ほとんど話もしてないし。」
「星野さん。ヤキモチは後で妬いてください。」
いーじゃん。いつ妬いてもいいのがヤキモチでしょ?
「開き直るんですか。」
エレベーターの中に3人の笑い声。
楽しいのか楽しくないのかなんかよくわからない感情が少しだけ蠢くが。まぁいっか。
エレベーターが地下の駐車場に着く。
車まで歩いて向かった。さっきまで暖房がかかってた空間にいたから空気が余計に冷たく感じる。
かおるさんが助手席に乗り込もうとする所を手を引いた。
かおるさんはこっち。いーよね?石田くん。
「とうぞ。」
「え。でも。」
いーの。今日全然話してないもん。
「子供ですね。ふふっ」
なんとでも言って?
2人で後部座席に乗り込む。
乗り込む前に。暑いからって言ってかおるさんが着せてくれたコートを脱ぎ後部座席の真ん中に投げ入れる。それを挟んで。石田くんの後ろにオレ。誰もいない助手席の後ろにかおるさん。
「では行きますよ。」
お願いしまーす。
車はゆっくり動き出す。
次の現場まではそんなに遠くない。
東京の街並みとイルミネーション。それらが通り過ぎてく様子をかおるさんは見ている。
かおるさん。
「はい?」
次はちゃんと見てて下さいね?
「あ。すみません。紅白寝ちゃってて。」
控え室入ったら寝てるんだもん。
びっくりした。ふははっ。
「寝るつもりは無かったんですよ?」
階段駆け上がってくれてありがとうございます。
疲れたでしょ。
「…着物で階段ダッシュは初体験でした。」
無造作に脱ぎ捨てたコートの中に手を入れる。
たぶん石田くんからは見えてる。でもいい。
隣に座るかおるさんの太ももを指先でつつく。
「?」
手。
膝の上にきちんと組まれている右手をください。
かおるさんの顔に赤みがさした。
恐る恐る。右手がゆっくり太ももを滑り降りてコートの中に入ってくる。
オレの指に触れた瞬間に包み込んだ。
「!」
一瞬びっくりした顔。
でもすぐにふわっとした優しい顔になった。
あなたもこーしたかった?
次は全員真っ黒ですねぇ。
「お正月ですから。正装です。」
オレは書道家みたいだけどね。
「ふふっ。星野さんまで真っ黒にしたらちょっと怖いでしょ?」
そっか。
「あ。年が。明けましたね。」
車の時計が0時ピッタリ。その瞬間窓から見えていたビルなんかが一斉にライティングを変えていく。
東京に住んで長いけど。やっぱりこの瞬間は都会ってすごいと思う。
でも今この瞬間は隣のかおるさんの手の温もりを感じる方に神経が集中していて。ライティングの変化よりもその明かりが浮かび上がらす優しい顔を見ていたくて。
あけましておめでとうございます。かおるさん。
「ふふっ。あけましておめでとうございます。」
「コホン。星野さん。あけましておめでとうございます。」
ふははっ。石田くん。あけおめー。
「なんでそんな軽いんですかー。」
忘れてないよ??
今年もよろしくね?
「お願いしまーす。」
「ふふっ。いいですね…こーゆー年越しも。」
いつもは?どうしてるの?
「そうですね…去年は実家にいました。紅白見ながら年越しそば作って食べて。実家のすぐ近くに神社があるんでゆく年くる年が始まったら家族で初詣に行って。
帰ってきたらまたちょっと呑んで各々寝るみたいな?
普通のお正月です。」
いいなぁ…
「そうですか?」
ここ5年くらいそんなお正月してないよね。石田くん。
「そうですね。」
いつも年越しは車の中だし。
「それはそれでいいじゃないですか。」
え?なんで?
「こんな素敵な光景を見れるんですよ?」
ふははっ。
そー言われてみればそうかもね?
「わたしは東京に住んでおきながら。こんな光景を初めて見ました。」
そうなの?
「星野さんに感謝ですね。あと運転して下さってる石田さんにも。ありがとうございます。」
かおるさんの手の甲をなぞる。
この人は…素敵な考え方が出来るんだな。
物事には2つの捉え方がある。
いい方と悪い方。
かおるさんは年越しを車の中で過ごすことによってこんなに素敵な光景が見れるってプラスの事を考える。
オレからしてみれば見慣れてしまった夜の東京。年越しをまたもや車の中で過ごしてしまった…とマイナスな事を。
この光景を素晴らしいと感動したのはそんなに昔ではないはずなのに。いつの間にかその気持ちを忘れかけていたのかもしれない。
それをふとした事で思い出させてくれた。
かおるさん。
「はい?」
握る手に少し力を込める。
ありがとう。
「え?」
いろいろ。
「?…ふふっ。いいえ。」
困った笑顔。
なんかいろいろほんとにかなわねぇな。この人には。
全面降伏してしまいたくなる。
雪女に身も心も預けてしまいたくなる。
「星野さん。そろそろ着きますよ?」
…はーい。
「嫌そうですねぇ…(笑)」
そんなことないよ?ふははっ。
次の現場のビルが目の前にそびえ立ってて全貌が見えない。
ここでとりあえず本日最後のお仕事です。
日々の嫉み
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