(こちらは完全に妄想の物語です。
実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)
紅白当日 5
『第69回紅白歌合戦!始まります!』
高らかに司会進行役の女優さんが声を張り上げる。
全出場者が紹介され、全員で1曲歌う。
ステージの前はリハーサルではいなかった人人人…
NHKホールが満員だ。
せっかく年末なんだから。家族と過ごせばいいのに。
みんなよく来てくださいました。
オレは出来れば…静かな年末年始を過ごしてみたい。
ここ5年(いやもっと?)くらいは年末年始が稼ぎ時みたいにこっちの番組あっちの収録と引っ張りだこ。
嬉しい悲鳴をあげるしかない。
ありがたい。ありがたいんだけど…たまには…なぁんて。贅沢極まりない。
コタツに入って。紅白歌合戦を見ながら。年越しそばを食べて。除夜の鐘の鳴る方向に初詣に出かける。
ささやかだけど。大事な事だと思う。
いつかね。誰か。大事な人と。
今年はかおるさんまで巻き込んじゃったなぁ。
オレ個人としては大変嬉しいですけども。
今大事だと思ってる人と一緒に(半ば強制的にではあるけども)過ごすことが出来るのはかなり贅沢だと思うし。
でもたぶんCDTV出たら…もう仕事は終わり。
1日は舞台挨拶だし、そのまま一緒にいるってことは出来ないんだろうな…
土日の約束は取り付けたけども。
ここ最近毎日のように会ってなんだかんだ濃い時間を過ごした分…さみしいような。
連れ歩けたらいいのにね。
ドラえもん。スモールライト貸してよ。
「源くん。ボーッとしてちゃダメよ?」
ん?あ。
カメラがこっちを向いてないからと余計な考え事をしてしまった。
ジャニーズの仲良しさんに注意されてしまった。
『ではまずは先行赤組から!』
女性アーティストの出番から歌合戦が始まった。
次の出番は裏紅白だな。
控え室に戻れる。
「源くん。さっき何考え事してたの?」
後からさっきのジャニーズくんが追いかけてきた。
いや。別に。
「ちょっとニヤついてたよ?」
ウソでしょ。
「うん。ウソ。」
なんだってオレの周りはこんな目ざとい人が多いんだろうか…
隠してるつもりでも割とバレてる。
またメシいこー。
「うん。また誘うわ」
じゃねー。
「その時に教えてね?アレ。」
あれ?
ジャニーズくんが指さす方向を見る。
かおるさんが風呂敷を持ってオレの控え室を出ようとしてるところだった。
「あんな着物美人がなんで源くんの控え室から出てくんのか。」
今回の衣装担当さんよ?
「えー。つまんない!」
なにそれ。ふはは。
もう笑って誤魔化しとこう。
話せる時が来たら話したげるから。今はそっとしといておくれ。
ジャニーズくんとはそこで別れた。
控え室に戻る。かおるさんのお香の残り香がほのかに残ってる。風呂敷の山は残り2つになってた。
「星野さん。次は裏紅白ですね。」
うん。
石田くんが入ってきた。
紅白終わったら…ダッシュでCDTVよね?
全員で移動すんの?
「いや。バンドメンバーは衣装チェンジが終わり次第行く手はずになってます。星野さんは最後のエンディングまで出てから、先に移動して、向こうで着替えて貰うようになりますね。」
CDTV終わってからは?
「終わってからは終わりですよ?」
1日は何時から?
「どしたんですか?」
え?なんで?
「いや、あまりそんなに気にすることないじゃないですか。」
んー。なんとなく。
「ふーん。」
ふーんって。
「1日は朝10時にお迎えに行きます。」
そっからは出ずっぱり?
「そーですね…まぁ宿泊の準備さえしとけば行ったり来たりは無く済むと思いますよ?」
んー。わかったー。何泊分だっけ?
「1日の夜、2日の夜、3日の夜。3泊分で足りるかと。」
修学旅行みたいね。
「すごい忙しくて移動距離の長すぎる。修学旅行。」
やめてー。考えただけでしんどいじゃん?
「やっぱりかおるさんに似てきてますね…」
だから。なんでそーなんのよ。
「修学旅行に例えたりとか…」
そこ??ふははっ
「笑って誤魔化してもダメですから。」
コンコン。
「はい。どうぞ」
「あ。星野さん、石田さん。おかえりなさい。」
かおるさんも。おかえりなさい。
「ただいま戻りましたー。」
ふははっ!小学生みたい!
「そんなことないでしょ。ねぇ石田さん?」
「いえ。今のは小学生みたいでしたよ?」
「ひどいですねぇ。ふふっ。」
はにかみながらもちょっとふくれっ面が可愛いなぁ…なんて思ってたらまたすぐキリッと顔が切り替わる。
「あとは女性陣のところに持っていくだけになりました。
着付けも時間通り始めれると思います。」
「ありがとうございます。」
さすがかおるさんです。
「褒めるのは。無事星野さんの出番が終わってからにしてください?」
そうですね。
「運動会本番はこれからです。」
石田くんと目が合う。
2人で笑ってしまった。
「なにがおかしいんですか?」
可愛いなぁって。
「他人事だと思って。怒りますよ?」
「ダメですよ。星野さん。怒らせちゃ。」
石田くん。どっちの味方なの?
「僕は中立です。」
ずりぃ!
「ずるい!」
今度はかおるさんと目が合った。
3人で笑った。
年末だし。紅白だし。年明けてからもくっそ忙しいのに。一瞬だけそんなこと忘れることが出来た。
「では。行ってきます。」
かおるさんが残りの風呂敷を持って立ち上がる。
行ってらっしゃい。
「はい。」
控え室のドアが閉まった。
「星野さん…かなり惚れ込んでますね。」
え?
「信用してますから。頼みますよ?」
わかってます。
「やはり…素直過ぎますね…」
オレそんなに素直じゃないの?
「え?自覚ないんですか?」
どーゆーことよ?
「いやいや。星野さんはそのままでいいです。」
石田くん…ニヤつきすぎ。
「星野さんも。」
ふははっ
少しづつ。出番の時間が近ずいてくる。
あと2時間半後には本番だ。
「そろそろ裏紅白。行きましょうか。」
はーい。
石田くんと2人で控え室をでた。
日々の嫉み
0コメント