(こちらは完全に妄想の物語です。
実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)
紅白当日 7
星野さんの控え室は明かりが付いたままだったけどもぬけの殻だった。
控え室のテレビでは男性歌手が歌っている。
今何番目なんだろう…
まぁ。いい。
8時半がすぐそこまで迫っている。
『こんばんはー!星野源でーす!』
突然テレビから聞こえた星野さんの声。
え?と思って目をやるとお笑い芸人のコンビの隣に星野さんの姿があった。
副音声?歌ってる歌手の声が遠いことに気づいた。
これもお仕事なのね…
ご活躍で何より。
『源くんは今年も忙しかったよねぇ』
『そうなんですよぉ』
『全然メシとか行けてねーもん』
『行きましょ!来年は!』
『とか何とかいって…どうせ来年も忙しいんでしょ?』
『ふはは。年が開けなさそうで困ってます!』
『元旦から?』
星野さんがカメラ目線になった。
『元旦から。よーいドン!でお仕事です。』
ん?よーいドン?
飲みかけていた水を吹き出しそうになった。
時計を見る。8時半だ。
え?わたしに向けて言ったの?
…まさかね…
さ。行かなきゃ!
星野さんの控え室を出る。
まずは伊能さんから。305号室に向かう。
歩きながら黒い腰紐でたすき掛けをする。星野さんが本番で使う腰紐と同じタイプ。
気合いが入った。よし。全て上手く行くはず。
コンコン。
返事がない。
あれ?伊能さんは?
控え室の明かりは付いているけど。
時間勝負なんだけどな…こんなことならメンバーさんたちの連絡先を聞いておくべきだった。
仕方ない。先に行こう。
伊賀さんが同じフロアだ。
伊賀さんの控え室に急ぐ。
明かりが付いてる。
コンコン。
「はーい」
おはようございます。
「かおるさん。こんばんわ。」
すみません。ちょっと予定が変わって…先に伊賀さんの着付けに入ってもいいですか?
「あー。いいですよ。」
伊賀さんはちゃんと準備した通りの格好をしてくれていた。
着物を羽織って貰い、腰紐で止める。
角帯を結んで、羽織を着せる。
出来ました。しんどくないですか?
「はい。大丈夫です。相変わらず手際がいいですねぇ」
恐れ入ります。
では、本番が終わりましたらまた着付けに参りますので。
「わかりました。」
失礼します。
本番頑張ってくださいね!
「ありがとう」
伊賀さんの控え室を出る。
穏やかな人だな。
さ。次。
伊藤さんと櫻田さんが4階。とりあえずもう一度伊能さんの部屋の前を通ってみる。
やっぱりいない。非常階段に向かう。
1階分を駆け上がって4階の伊藤さんの控え室に向かう。
コンコン。
「はい。」
失礼します。
おはようございます。
「かおるさん。早くない?」
すみません…ちょっと予定が狂っちゃいました。
先に着付けに入ってもいいですか?
「いいですよ。」
ありがとうございます。
伊藤さんも準備した通りの格好で待ってくれていたので話が早い。
星野さんのバンドメンバーさん達はみんな穏やかな人が多いな。
星野さんの人徳なんだろう。
本番頑張ってくださいね!
また終わったら順番に着付けに来させてもらいますので。
「ありがとうございます。」
次は櫻田さん。
ここまでは順調。まだ余裕はある。
櫻田さんの控え室の前に行く。
コンコン。
「どーぞー。」
失礼します。おはようございます。
「かおるさん。おはようございます。」
ちょっと予定が変わりまして。
先に着付けに入りたいのですが…大丈夫ですか?
「あー。ちょっと待ってください?」
櫻田さんは上半身が用意した衿なしシャツ。
下半身がジーパン、スニーカー。
控え室の外で声がかかるのを待った。
「お待たせしました。すみません。」
いえ。こちらこそすみません。
控え室に入り着付けを手早く済ませる。
「手際いいですねぇ」
ありがとうございます。しんどくないですか?
「大丈夫です」
では本番頑張ってくださいね!
また後で着付けに来ますので。
「よろしくです。」
4階は終わった。
とりあえず3階の伊能さんの部屋に戻ろう。
非常階段を駆け下りる。
急がなきゃ。3分押してる。
伊能さんのへやの前に戻ってきた時に。
伊能さんがトイレから出てきた。
「かおるさん。」
伊能さん!大丈夫ですか?
「すみません…ちょっとお腹の調子が悪かったんです。
申し訳ない。」
少し青白い顔色。
無理はさせれない。
伊能さん。ちょっと横になっておいてはどうでしょう?まだ時間もありますので。
「大丈夫ですか?」
30分くらいしかゆっくり出来ないかもしれませんけど。
「十分だと思います。すみません。」
じゃまた後で。
長岡さんの控え室は5階。
ちょっと遠い。先にミオさんとアヤネさんを着せよう。その後伊能さん。
頭の中の順路を変えていく。
ミオさんの控え室をノックする。
「どーぞー」
おはようございます。
失礼します。
「かおるさーん!よろしくお願いしまーす」
すみません、ちょっと予定が変わってしまって。
ミオさんとアヤネさんを先に着付けてもいいですか?
「いーですよ」
ふわふわ綿菓子のようなミオさん。
女のわたしから見ても可愛らしい人。
肌着とステテコを履いて貰う。
細いのでタオルで補正をしていく。
演奏の妨げにならない程度に最小限。
しんどくないですか?
「うん。大丈夫です。」
襦袢を着てもらい、コーリンベルトで留める。
上から衣装合わせで選んだ着物を羽織らせて、またコーリンベルトで留め、帯を結ぶ。
袴を下から履いてもらい最後にブーツを履いてもらった。
はい。終わりです。
どこか不自然な感じがするところはないですか?
「ううん。大丈夫です。かおるさん着付け上手ですねぇ。今度教えてください。」
いいですよ。
「わぁ!やった!」
あぁーっかわいいっ
萌えるってこんなことを言うのかしら。
ギューッと抱きしめたくなるような可憐さ。
ではまた後で着付けにまた来ますね。
本番頑張ってくださいね!
「はーい。ありがとー。」
ひらひら手を振って送り出された。
さぁアヤネさん!
隣の控え室をノック。
「はーい」
おはようございます。すみません、ちょっと予定が変わりました。先に着付けさせてもらってもいいですか?
「大丈夫ですよ」
ありがとうございます。
伊能さんに横になっとけって言ってからそろそろ20分だ。やばい。押してきた。
ミオさんと同じ順番で着付けをしていく。
しんどくないですか?
「はい。大丈夫です。」
では本番終わってからまた回ってきます。
頑張ってくださいね!
「はーい」
控え室を出た。
伊能さんのとこに戻る。
伊能さん?大丈夫でしょうか?
「あ。はい。ありがとうございます。だいぶマシです。」
着物着れそうですか?
「たぶん…」
まだ顔色は戻ってない感じだな…
先に長岡さん行くか。
もう少し。横になっときますか?
先に長岡さん行ってきますんで。
「すみません…」
ドアを閉めて。非常階段まで走る。
こんな本格的に運動会になるとは思ってなかった。
急げ。
2階分を駆け上がるのは…ちょっとしんどかった。
脚がふらふら笑い出してる。
息を少し切らしながら長岡さんの控え室の前まで来た。
コンコン。
「はーい」
かおるです。お疲れさまです。
「あれ?ちょっと早い?」
ごめんなさい。ちょっと予定が変わりまして。
何回目だこの説明。
定型文にして貼り付けておきたい。
「ふーん。まぁ俺は全然構わないですよ。」
ありがとうございます。
「今日の着物は一段とかっこいいですねぇ。」
あ。わたしですか?
ありがとうございます。
思わずニヤけてしまう。
長岡さんは既に用意した通りの格好だ。
その上から着物を羽織ってもらう。
「この前源ちゃんと話してたんだけどね」
はい?
「着物姿の人に着せてもらうのは…エロいねぇって。」
ふふっなんですかそれ。
「ほら、今みたいに膝まづいて帯締めてる時とか」
見えそうで見えないってやつですか?
「ははっそうそれそれ」
着物の醍醐味ですねぇ。
「エロいよねぇ。着物」
そうかもしれませんね…
着物は隠す美。
隠してるからこそ想像力を掻き立てられるもの。
はい。出来ました。しんどくないですか?
「うん。大丈夫よ。」
では。また本番終了後に来ますので。
「ありがとー。」
伊能さんの所まで戻らなきゃ。
非常階段を駆け下りる。
草履で降りるのはなかなか危ない。
すれ違うスタッフにちょっと怪訝な目で見られても気にしない。
3階まで戻った。
時間は…10時10分
伊能さん?大丈夫ですか?
ノックをしてから控え室に入った。
「はい。さっきよりだいぶマシになりました。
すみません、段取り崩しちゃって。」
大丈夫です。
何とかなります。
顔色もさっきよりはマシになっていた。
伊能さんはちゃんと用意した格好になってくれていた。
急いで着付けをする。
袴の紐を結んで様子を見た。
しんどくないですか?
「はい。大丈夫です。」
本番終わってまた回ってきますが、もしそれまでにしんどくなるようだったら脱いでていいですからね?
「わかりました。ありがとうございます。」
では。
次は星野さん。
めちゃくちゃギリギリだ。
また非常階段を5階まで駆け上がる。
暖房が効いてる。暑い。
日々の嫉み
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